◆「インクルージョン」って?
まだまだ「インクルージョン」って何? そう思われたかたは少なくないことと思います。
日本では未だ全く馴染みのない言葉ですが、インクルージョンが当たり前の世の中でなければなりません。
「インクルージョン」とは、多種多様に違うひとりひとりの存在を「尊重」し、誰一人置き去りにすることなく、支え合いながら全てが混ざり合い、無理なく自然に繋がり合うことで、「共存」していることを表す語です。
・インクルージョンの概念
人間は、皆ひとりひとり違う存在です。この「ひとりひとりの違い」ということを基礎として、個から広がる人・物・事との繋がりや関係性、成り立ちも含めて、すべてを肯定的に発展させていく考え方。それが、インクルージョンの概念です。
すなわち、多様な人たちが自然に混ざり合っている状態そのものが「インクルージョン」であると言えると共に、その理念とひとりひとりの行動指針も含めた総体的な考え方のこと。
これが、「インクルージョン」という語に内包されている本来の定義なのです。
◆インクルージョンは優しさの波紋
ときおり私は、「インクルージョンとは?」と質問されたときに、一言でそのように説明することがあります。
一枚の木の葉が、優しくみなもに着水したとき、波紋は静かにも確実に、そして「優しく」広がっていくように…。
私たちの人間の心の中にも一つの優しさは、波紋のように静かに、そして確実に伝播して広がっていきます。人から人へとどこまでも…。
国から国へと…、星から星へと…。
インクルージョンは、心から心へと、人から人へと広がっていく優しさの波紋。そんな世の中のあるべき姿なのです。
私たち人間は心の中に優しさという輝く宝石を誰もが等しく持っています。
この自らの輝きの波動に気が付く瞬間。優しい気持ちが心の中から自然と湧き上がってくる瞬間。
この心が動き始める瞬間は、人と人とが触合うことで、存在が隣にあるということだけで、それだけで訪れてくれるのです。
◆インクルージョンの存在意義
インクルージョンの語意は、この本にも度々出てくる「共生」が最も近い語として解することができますが、正確には「共生」の真なるところ「共に」と「生きる」というところの深いところに答えは存在します。
また、本書では、インクルージョンの最終到達目標は、「平和」であると結論的に記しておりますが…、ただ日本語の平和が表現する以上に広い意味があります。人と人との平和はもとより、森羅万象すべての事象・事物との共存共栄。その存在のありかたやありよう。そんな普遍的な広い意味も込められています。
大きなスケールの中で、誰一人として決して排除(エクスクルード)されることなく、すべての関係性によって存在し、生かされて、肯定される存在。
つまり、私たちひとりひとりの存在の由縁。存在の意義そのものなのです。
・障害観・人間観
「障害」とは決して特別なことではなく、極々身近に存在する「普遍的」なこと。
誰もが当たり前に有する自分事。
はたして、人間の存在とはいったい何なのでしょうか? 私たち人間が存在する理由は…? 存在意義とはいったい…? 人間が人間として、人間らしく生きるとは…?人間(社会)の本来あるべき姿とは…?
まさに、インクルージョンは、人間を生きる命の存在意義を実践ベースで積み上げながら、人間社会の在り方を成熟させていく考え方なのです。
■『共生』の真なる
・インクルージョンの各論
インクルージョンの一つの核心的なところに、もう少しだけ踏み込んで触れておくことといたします。
「インクルージョン(英: inclusion)」の和訳。
この語意を明確に日本語訳できる人は、今の我が国には一人も存在していません。
これは、説明に値する適切な言葉が日本語に存在していないのではなく、「インクルージョン」の語彙にかなうだけの状況が、今の我が国にはどこにも存在していないということなのです。
これが、今の「インクルージョン」の真髄に迫る最初の扉、序章の入り口なのです。
ここに立ち戻って、インクルージョンの行間を共に感じていただけますと幸いです。
今の世を生きる私たちは、未来の世に明確な指針を残してあげなければなりません。
それが私たちの大切な使命。今の世を生きる大人たちの重要な責任です。社会の宝、未来を生きる子供たち・若者たちを戸惑わせてしまうことのないように…。
「インクルージョン」とは、=「○○」です。
そう当たり前に胸を張って語ることのできる日が、一日も早く訪れてくれることを切に願うばかりです。
さて、はたして、…。
共に生きる『共生』の真なるとは、…。
引用:自著「インクルージョン手引書」函館限定版
第3章 インクルージョンの定義より
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